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関税っていくらかかるの?

◎通関〜申告から許可までの流れ

 商品を海外から日本国内に仕入れる場合、代行業者を使っていると思います。商談が進んでいくと、B/L(船荷証券)が発行されてインボイス(仕入書)やパッキングリスト(梱包明細書)を通関業者に送付し、それらを持って課税価格(CIF価格)を決定し、通関士が輸入者に代行して税関に納税申告を行います。

 その際、申告までに商品によってHSコード(税番)が異なりますので、実行関税率表(タリフ)を見ながらHSコードを決定していきます。HSコード毎に関税率が定められておりますので、税関審査でHSコード等に誤りがなければ、審査が終了(誤りがあれば申告中の訂正)し、関税と消費税等を納付してそこで初めて輸入許可となります。輸入許可後にCY・保税蔵置場から貨物を引取ります。

 関税は、国内産業の保護を目的に税関に納税するためのお金です。ここでの消費税は、仮払いなので後ほど還付手続きをすれば返ってくるお金です。

 ここまでが、通関~申告から許可までの大まかな流れになります。

 では、実際に関税率が知りたいという要望があるかと思いますが、関税率はあらかじめ事前に調べておくことができますのでコスト試算したいときには、自分でHSコードを調べたり税関や通関業者に問い合わせをしておくこともできます。嫌がられてちゃんと教えてくれませんでした。とか、敷居が高いし窓口が多くて聞きづらい、といったことがあれば、当サイトの「お問い合わせフォーム」よりお気軽にご相談ください。

 それでは、関税額の計算方法について、以下簡単に説明させていただきます。

① 課税価格について(税関HPより)

 課税価格とは、「商品の価格+海外から日本までの運賃+保険料」=CIF(Cost Insurance and Freight=運賃保険料込み条件)価格のことを言います。 

 輸入貨物の課税価格の計算は、原則として、「輸入貨物の取引価格による方法」(関税定率法第4条第1項)により行うこととなります。
 この原則的な方法により課税価格を計算することができない場合には、次の方法を順次適用して計算することとなります。
  • 「同種又は類似の貨物に係る取引価格による方法」(関税定率法第4条の2)
  • 「国内販売価格に基づく方法」(関税定率法第4条の3第1項)
  • 「製造原価に基づく方法」(関税定率法第4条の3第2項)
  • 「その他の方法」(関税定率法第4条の4)
 なお、希望する場合には、「製造原価に基づく方法」を「国内販売価格に基づく方法」に先立って適用することができます。
 また、次の輸入貨物については、特別な取扱いが定められていますので、留意してください。
  • 変質又は損傷に係る輸入貨物(関税定率法第4条の5)
  • ある種の航空運送貨物(関税定率法第4条の6第1項)
  • 個人的な使用に供される輸入貨物(関税定率法第4条の6第2項)

 また、個人使用目的の輸入には次のように課税価格の特例があります。
関税定率法第4条の6 
第2項
第四条から第四条の四までの規定により課税価格を計算する場合において、当該輸入貨物が、本邦に入国する者により携帯して輸入される貨物その他その輸入取引が小売取引の段階によるものと認められる貨物で、当該貨物の輸入者の個人的な使用に供されると認められるものであるときは、当該輸入貨物の課税価格は、当該貨物の輸入が通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格とする。当該輸入貨物が、本邦に居住する者に寄贈される貨物で、当該寄贈を受ける者の個人的な使用に供されると認められるものであるときも、同様とする。

 この条文より、実際にどのように課税価格を計算するかと言うと、商品の海外小売価格に0.6を掛けた金額を課税価格としております。
通販等で個人が買った商品の価格は小売価格(末端価格)と呼ばれるもので業として輸入する商品の価格(卸価格が基準)よりも高価なので、不公平になり、このような規定があります。

②関税率について(少額輸入貨物の簡易税率)(税関HPより)

(総額20万円以下の場合)

 海外から商品を輸入する場合、個人使用の品物または贈り物であっても、原則としてその商品に対して関税が課されることとなりますが、一般貨物または郵便小包を利用した場合で、課税価格の合計額が20万円以下の場合には、一般の関税率とは別に定められた簡易税率が適用されます。

 一般の関税率を適用する場合、数千もの品目分類の中から税率を適用することになりますが、この簡易税率を適用する場合、その品目分類を大別した7区分において税率を確定します。ただし、この簡易税率は、携帯品及び別送品、関税が無税または免税になるもの、わが国の産業への影響を考慮し簡易税率を適用することが適当でないとされている物品には適用されません。

 また、輸入者が、これら輸入貨物の全部について一般の関税率の適用を希望した場合には、一般の関税率を適用します。(実行関税率表

少額輸入貨物に対する簡易税率表 (関税定率法第3条の3関係)

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  1. 課税価格が1万円以下の貨物の場合、原則として、関税、消費税および地方消費税は免除されます。ただし、酒税およびたばこ税・たばこ特別消費税は免除になりません。また、革製のバッグ、パンスト・タイツ、手袋・履物、スキー靴、ニット製衣類等は個人的な使用に供されるギフトとして居住者に贈られたものである場合を除き、課税価格が1万円以下であっても関税等は免除されません。
  2. 個人の方がご自身の個人的使用の目的で輸入する貨物の課税価格は、海外小売価格に0.6を掛けた金額となります。その他の貨物の課税価格は、商品の価格に運送費および保険料を足した金額になります。
  3. 上記の関税率とは別に内国消費税(消費税、酒税など)および地方消費税が別途課税されます。また、無税のものについては、内国消費税および地方消費税のみが課税されます。
  4. 郵便物の重量制限などのため2個以上に分割されている場合は、この合計が課税価格となります。
  5. 次のものについては、「少額輸入貨物に対する簡易税率表」は適用されません。

一般税率が適用されるもの(例)
  • 米などの穀物とその調製品
  • ミルク、クリームなどとその調整品
  • ハムや牛肉缶詰などの食肉調製品
  • たばこ、精製塩
  • 旅行用具、ハンドバッグなどの革製品
  • ニット製衣類
  • 履物
  • 身辺用模造細貨類(卑金属製のものを除く)

③課税価格が1万円未満の場合の免税規定


 上記の簡易税率表の注意書1.にある規定が使える場合もあります。
 ただし、本邦産業に与える影響から、対象外のものもあります。
関税定率法第14条(無条件免税)(抜粋)
次に掲げる貨物で輸入されるものについては、政令で定めるところにより、その関税を免除する。
第18号
課税価格の合計額が1万円以下の物品(本邦の産業に対する影響その他の事情を勘案してこの号の規定を適用することを適当としない物品として政令で定めるものを除く。)

 つまり、①で述べた個人用品特例を使った課税価格が1万円以下なら、免税されるという規定です。
 逆算すると、10,000÷0.6=16,666となりますので通販で購入した金額が16,000円であれば、課税価格が9,600円となり、免税の適用除外貨物に該当しなければ、無条件免税を適用できる可能性があります。(関税の計算は、課税価格を1,000円未満切捨てて乗じます。)
 以上、個人輸入の場合の特例となります。
 他の注意点としては、上記の簡易税率表の注意書3.にあるとおり、輸入する場合には関税のみではなく、消費税等も課されます。
 また、通関の手続を通関業者に依頼する場合には、通関手数料等も必要となります。
 なお、通関手数料は、平成 29 年 10 月 8 日、通関業法の基本通達が改正され、通関業務料金の最高額表は廃止となりました。 今後、通関業務料金は各通関業者が個々に設定することになりますので、 通関業者に依頼する際は事前にご確認ください。

◎最後に(関税関係法令以外の法令)

 余談で、AIR貨物などの小口の輸入の場合、簡易税率を適用することがあるかもしれませんが、船便貨物の場合は大口が多いこともあり、適用することは稀です。実際のところ、前もって簡易税率の適用を指示しないと一般税率を適用することがほとんどで、こんな風に言っている私も簡易税率適用の指示があり簡易税率の品目コードを使用し申告したことがありますが、税関審査官も不慣れなせいか今回初めての適用ですか?とか、無駄な質問責めに合い、簡易であるのに審査が滞る(小口の輸入の場合は、怪しまれて税関検査の指定を受けるなど余計な費用がかかる)といった経験があります。

 関税の話ではありませんが、輸入するものによっては他法令上の規制があるものもありますので、注意が必要です。関税関係法令以外の法令を、他法令と呼んでいます。例えば、外国為替及び外国貿易法、輸入貿易管理令、食品衛生法等で規制がかかる商品があります。

 外国から輸入される貨物のなかには、我が国の経済、保健衛生又は公安風俗などに悪影響を及ぼす場合があり、これらの貨物については、それぞれの国内法令によって輸入の規制が行われています。
 これらの法令の規制は、関税法の輸入の許可制と結びつけてその実効性が確保されることとなっています。
 したがって、貨物を輸入しようとする場合において、関税関係法令以外の法令により輸入に関して許可、承認等を必要とする場合には、これら他の法令の規定に基づいて許可、承認等を受けて、輸入申告又は当該申告に係る審査又は検査の際にその旨を税関に証明して確認を受けなければ輸入は許可されません。
 なお、法令の規定によっては、外国の政府機関等の証明等を取得していないと許可、承認が受けられないものもありますので、事前にこれらのことについて調べておく必要があります。
 
 最後までご購読ありがとうございます。どの商品が他法令に該当するのかわからないことがあれば、当サイトの「お問い合わせフォーム」よりお気軽にご相談ください。