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原産地誤認ってどういうこと?

◎税関検査で判明

 通関業者に見積もりしたのち、税関検査に該当した場合は別途費用を請求されることがあると思います。税関検査は、税関に実績のない輸入者や水際取り締まりの検査強化期間中に申告した貨物であると指定があります。検査に該当する要因は、特定のHSコードであったり、特例輸入者以外で、物品の相場を記したプライスレンジや税関レンジ表と呼ばれるものがあるのでここから大きく逸脱した物品の場合は簡易審査扱いとならず、また法人番号がない無符号の輸入者であると該当する可能性が高くなります。そして開披・改品検査となった場合、貨物を確認すると原産地の申告内容が貨物の原産地表示と相違しているといったことがよくあります。

 

 この場合、そのまま輸入許可とすることができませんので、申告中の貨物を検査場所から検査指定票を裏書き、横持ちして通関業者の自社倉庫でマーク訂正をしたり、貨物の量が多いと一つ一つマーク訂正しなければならず、大変な労力と時間が発生することになります。

 

◎事例

 

 1.中国製の商品をリパックし、インドネシアから出荷

 

 インボイスやパッキングリスト、B/L、A/N、商品説明書の通関書類一式を揃えて、通関業者に輸入通関を依頼します。通関業者は、商品の内容について質問し、輸入者が輸出者に商品内容の確認を行います。商品内容を確認した際、定期的に輸入者に出荷している貨物であるので、中国製の商品と気付かずにインドネシア製と誤って通関書類と外装の表示をしていたことが判明します。

 

 さて、その後に輸入者がとった行動は、「貨物の引取りを急ぐのでインドネシア製の表示のままで貨物を輸入できないでしょうか?」の返答でした。それに対して通関業者は、コンプライアンス違反となりますので、原産地誤認の恐れがある場合、貨物の内容点検を実施し、原産地表示に誤りがあればマーク訂正しなければ通関できないと回答します。

 

 2. 中国で作られた生地をシンガポールに輸入し、シンガポールの工場で縫製した衣類を日本に輸入

 

 この場合の衣類の原産地は、中国製でしょうか。違います。生地から衣類に項(HSコード4桁)の変更がされており、シンガポール製になります。このように現地からは、「中国で作られた」との連絡しかなく、実際はシンガポールで加工されていたケースです。輸入者は、そのことを知らず通関業者に中国製と口頭で伝えて、誤った内容で申告します。税関も積出地がシンガポールであるので不可解に思い、エビデンス書類の提出と検査の指定をします。検査を実施したところ、貨物には原産地の表記はなかったので、原産地誤認に該当せず申告内容の訂正後、無事に輸入許可となりました。ただし、シンガポール製であるとEPA特恵が適用できた可能性があります。輸入者にとっては、非違にカウントされ関税もかかっていますので、ダブルで損をしていることになります。

 

関税法

 

(原産地を偽つた表示等がされている貨物の輸入)

第71条 原産地について直接若しくは間接に偽つた表示又は誤認を生じさせる表示がされている外国貨物については、輸入を許可しない。

2 税関長は、前項の外国貨物については、その原産地について偽つた表示又は誤認を生じさせる表示がある旨を輸入申告をした者に、直ちに通知し、期間を指定して、その者の選択により、その表示を消させ、若しくは訂正させ、又は当該貨物を積みもどさせなければならない。

 

 上記のように、原産地の表示に誤りがあると「その表示を消させ、若しくは訂正させ、又は当該貨物を積みもどさせなければならない。」とあります。

 

基本通達

 

 (原産地の虚偽表示等に関する用語の意義)
71―3―1 法第 71 条にいう「原産地」、「直接若しくは間接に」、「偽った表示」及び「誤認を生じさせる表示」の意義は、それぞれ次による。


(1) 「原産地」とは、一般的には貨物が実際に生産又は製造された国又は地域(以下この項において「国等」という。)をいい、原則として令第4条の2第4項の規定を準用する。ただし、香港及びマカオの製品について原産地を中華人民共和国との表示を行った場合であっても虚偽表示として扱わないものとする。
この場合において規則第1条の7に規定する「単なる部分品の組立て」とは、簡単な締付具(例えば、ねじ、ボルト、ナット等)、鋲接、溶接等の簡単な組立て操作により、当該完成品の部分品を組み立てることをいう。ただし、当該貨物の品質、性能に重大な影響を伴うような組立てを除く(例えば、卓上型電子計算機、時計の部分品セットの組立て等は「単なる部分品の組立て」とは認めない。この場合において、真正な原産地を表わす表示は、「○○(国等の名称)で組み立てられたものである」旨(例えば、「assembled in ○○」、「組立○○」。)を表示するものとする。)。


(2) 「直接若しくは間接に」とは、偽った表示又は誤認を生じさせる表示が輸入貨物自体に直接的に又は輸入貨物の容器、包装等に間接的に表示されていることをいう。


(3) 「偽った表示」とは、貨物に原産地以外の国等において生産されたことを 示 す 表 示 を い う ( 例 え ば 、「 Made in ○ ○ 」、「 Produced in ○ ○ 」、「Fabricated in ○○」のように、貨物の原産地以外の国名等が当該貨物の原産地を表わす文句とともに表示されている場合をいう。)。ただし、輸入貨物が部分品、容器、包装、ラベル等である場合において、当該部分品を材料として製造される物品、当該容器に入れられる物品、当該包装により包装される物品、当該ラベルが貼付される物品等の原産地が当該輸入貨物に表示され、当該原産地が当該輸入貨物の原産地と異なるときは、当該輸入貨物の輸入者(輸入の委託者を含む。)から必要に応じそのような用途に使用する旨の誓約書を提出させる等によりその用途を確認のうえ、「原産地を偽った表示」に該当しないものとし取り扱って差し支えない。


(4) 「誤認を生じさせる表示」とは、虚偽の原産地が必ずしも明白に表示されてはいないが、一般的、客観的にみて原産地の誤認を生じさせるような表示がされていることをいう。


関税法第 71 条及び第 78 条の適用範囲)
71―3―2 輸入者(輸入の委託者を含む。以下この項において同じ。)の個人的な使用に供すると認められる貨物及び注文の取集めのための見本又は製作上の手本として使用される見本若しくは試作品(以下「商品見本等」という。)については、関税法第 71 条《原産地を偽つた表示等がされている貨物の輸入》及び第 78 条《原産地を偽つた表示等がされている郵便物》規定の趣旨に鑑み当該規定を適用しないこととしてさしつかえない。ただし、原産地について偽った又は誤認を生じさせる表示のある商品見本等については、必要に応じ、輸入者に対し、「じ後、当該表示と同一の表示を付した商品を輸入する場合には、同条に該当することとなる」旨を適宜の方法により連絡しておくものとする。


(直接若しくは間接に偽つた表示等)
71―3―3 輸入貨物が容器入りのもの又は包装されたもの等である場合において、当該貨物自体又は容器若しくは包装等のいずれかに当該貨物の原産地以外の国、地域及び都市等の名称(以下「国名等」という。)がその原産地として表示され又はその原産地を誤認させる表示がされているときは、「偽った表示又は誤認を生じさせる表示」に該当するものとする。


(1) 次のいずれかに該当する表示は、原則として「誤認を生じさせる表示」として取り扱う。ただし、当該表示以外に真正な原産地を表わす明確な表示があり、その大きさ、表示場所等が当該表示の大きさ、表示場所等に比し妥当であると認められるときは、当該表示は「誤認を生じさせる表示」に該当しないものとして取り扱う。


イ  貨物の原産地以外の国名等が表示されている場合であつて、次のいずれかに該当するとき。
(イ) 単に当該国名等が表示されているとき。
(ロ) 当該国名等をその一部として用いた商標等が表示されているとき
(ハ) 当該国名等が、貨物の輸出国を示す字句等、原産地を示すものと誤認 さ れ る 字 句 と と も に 表 示 さ れ て い る と き ( 例 え ば 、 当 該 国 名 が「Imported from ○○」、「Licensed by ○○」のように表示されている場合)。
(ニ) 貨物の原産地以外の国名等が当該貨物の製造に使用された原材料の原産地として表示されているとき(例えば、当該国名が、「 Yarn」、「Material」、「Fabric」等の字句の後に「Made in ○○」のように表示されている場合)。


ロ  会杜名又は商標その他の図柄等が表示されている場合であって、次のいずれかに該当するとき。
(イ) 貨物の原産地以外の国の国旗若しくはその図案又はそのような国旗若しくはその図案を用いた商標その他の図柄が表示されているとき。
(ロ) 一般に貨物の原産地に所在しないと認められる会社の名称、又は一般に貨物の原産地のものでないと認められる商標その他の図柄が表示されているとき。

ただし、次のいずれかに該当する場合を除く。
(ⅰ) 輸入貨物に本邦の輸入発売元である者の名称又は商標等が表示されている場合であって、当該表示が輸入発売元の表示であることが明確にされているとき。
(ⅱ) 輸入貨物が、その輸入者(輸入の委託者を含む。以下この項において同じ。)が社用又は宣伝用に使用するために外国のメーカーに注文した物品であって、当該輸入者の名称、商標等が表示されているとき(例えば、輸入者たる本邦のホテルがその宿泊客に供するタオルを外国のメーカーに注文した場合であって、当該輸入タオルに当該ホテルの名称が表示されているとき)。
(ハ) 輸入貨物の原産地以外の特定の国等の特産品であると一般的に認められている貨物の名称が表示されているとき(例えば、本邦以外の国等を原産地とする絹織物に「大島紬」等の表示がなされている場合)。
(2) 前記(1)(ただし書を除く。)の適用に当たつては、前記 71―3―1(3)ただし書規定を準用する。
(3) 後記 71―3―4 により「誤認を生じさせる表示」に該当しない表示又はその他前記(1)の「誤認を生じさせる表示」以外の表示であつても、それらの表示が 2 種類以上表示されている等、それらの表示を総合的にみた場合に、その原産地について一般的に誤認を生じさせる可能性が強いと判断されるときは、「誤認を生じさせる表示」として取り扱うものとする。


(誤認を生じさせる表示に該当しない表示)
71―3―4 次のいずれかに該当する表示は原則として、「誤認を生じさせる表示」に該当しないものとして取り扱う。
(1) 貨物の原産地以外の国名等の表示が、貨物の流行、型又は品質、性能等を表現するような字句と併記されている場合で、当該字句が明確に表示されているとき(例えば、貨物の原産地以外の国名等が「Fashion in ○○」、「Mode in○○」、「○○Style」、「○○Patent NO…」のように表示されている場合)。
(2) 貨物の原産地以外の国の著名な風景等が表示されている場合。
(3) 貨物の原産地以外の国の文字を使用した説明文又は広告文等が表示されている場合。


関税法上の原産地と他の法令に基づく表示が相違する場合)
71-3-5 関税法上の原産地と食品表示法(平成 25 年法律第 70 号)等他の法令に基づく原産地の表示とが相違する場合であって、当該他の法令に基づき原産地の国等の表示が義務付けられており、当該他の法令に基づく適正な表示であると認められるときは、関税法第 71 条又は第 78 条の虚偽表示貨物には該当しないこととして差し支えない。


(法第 71 条第 2 項又は第 78 条第 1 項の規定による「通知」の方法等)
71―3―6 法第 71 条第 2 項又は第 78 条第 1 項の規定による通知は、当該通知に係る輸入貨物の検査を行った税関官署から輸入者(輸入の委託者を含む。)に口頭で行うものとし、また、第 71 条第 2 項の規定による指定する「期間」は、偽った表示等の抹消若しくは訂正又は積みもどしに通常要する期間とする。なお、当該期問について特に支障がないと認められる場合には、輸入者(輸入の委託者を含む。)から聴取した期間として差し支えない。


(偽つた表示等がなされている場合の当該表示の抹消等)
71―3―7 「偽つた表示」又は「誤認を生じさせる表示」に該当する表示が付された貨物について、法第 71 条第 2 項又は第 78 条第 2 項の規定に基づき行われる当該表示の抹消又は訂正は、当該貨物の輸入後容易に再訂正される等単に通関のための措置と認められるものであってはならない。

 

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