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EPA特恵が否認された事例

 近年、EPA(経済連携協定)を取り巻く環境は、より複雑化しております。


 そこで税関も下記のような原産地規則ポータルサイトを開設しておりますので、特恵適用をご検討されている方は、下記URLをご参考ください。


◎原産地規則ポータル

https://www.customs.go.jp/roo/index.htm


◎事例 

オーストラリアからオランダへ単板(木材)を輸出し、オランダの工場で単板をカットしたものを日本に輸入し、輸入者証明による日EUEPA特恵を適用する。


 EUEPAにおける原産性は、(1)完全生産品、(2)原産材料のみから生産される産品、(3)品目別原産地規則(PSR)の三つの基準で判断されます。さらにPSRは1.関税分類変更基準、2.付加価値基準、 3.加工工程基準の三つを選択でき、これらの大まかな構造は基本的にTPP協定と同様です。EPA特恵税率は、この原産地規則に加えて、積送要件の二つの条件を満たして初めて適用を受けることができます。

 付加価値基準の計算方式については、A 控除方式の域内原産割合(RVC)もしくはB 非原産材料の最大割合(MaxNOM)方式のいずれかを選択できるようになっております。

 協定上、それぞれの計算方式は以下のように定められています。

  1. 控除方式の域内原産割合(RVC)
    (産品の価額(FOB)-非原産材料の価額(VNM)) / 産品の価額(FOB)×100
    ≧ PSRで記載された閾値(いきち) → 原産性が認められる
  2. 非原産材料の最大割合(MaxNom)
    (非原産材料の価額(VNM) / 産品の工場出し価額(EXW)×100
    ≦ PSRで記載された閾値(いきち) → 原産性が認められる

 単板のHSコード4桁は、4407項です。それでは、4407項の品目別原産地規則を見ていきましょう。

◉品目別原産地規則(検索用)

https://www.customs.go.jp/searchro/jrosv001.jsp

上記検索ページで附属書を開くことなく品目別原産地規則の結果を調べることができますので、是非ご活用ください。

それでは、針葉樹の単板のHSコード6桁、440711を入力すると、検索結果が反映されます。

  オーストリアからオランダへ単板を輸出し、カットして加工していますが、カットしただけではCTSH、つまり4桁変更が行われていませんので、上記Bの非原産材料の最大割合(MaxNom)で原産性を満たしていることを証明しました。


 しかし、非原産材料の価額(VNM)を証明できる資料を輸出者から入手できなかったため、税関審査で否認されることになります。


 つまり、輸出者から証明できる情報がないと特恵を否認される可能性が非常に高いということです。


◎事後確認の目的(税関HPより)

https://www.customs.go.jp/roo/verification/index.htm


 おそらくこのように情報開示ができないと、事後確認においても否認されることになると思われますので、注意が必要です。