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中古車の輸出について

日本から中古車を輸出する際の通関手続き及び必要書類について解説します。

【必要書類】

通常、日本からの輸出において通常必要とされる通関書類は以下の通りです。

1. インボイス(INVOICE 仕入書)
2. パッキングリスト(PACKING LIST 梱包明細書)
3. 輸出抹消仮登録証明書(輸出予定届出証明書)(EXPORT CERTIFICATE 原本必要)
4. 写真(中古車の全体と車台番号(CHASSIS NO.)が写ったもの)

【輸出通関手続き】

1. 輸出通関手続きを円滑に行うため、中古車輸出に精通した通関業者(乙仲)を選び、インボイス・パッキングリストを作成します。インボイスには、メーカー・車種・車台番号・ガソリン車/ディーゼル車の区別・排気量・ブレークダウンした車両の場合は取り外しパーツ、等を明記します。

2. 船社に、貨物を仕向地に運ぶための船をブッキング(BOOKING 船積手配)します。中古車を輸出する際に利用できる輸送手段は、一般的に※RORO船もしくはコンテナ船の2つの方法が考えられます。輸出先国・輸出する車両の台数・輸送コストなどを考慮して、最適な輸送モードを選択して中古車を輸出します。

3. 各地の運輸支局等(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)において、輸出抹消仮登録証明書(一時抹消登録していない車両)または輸出予定届出証明書(一時抹消登録している車両)の交付を受けます(輸出抹消登録 参照)。この証明書(輸出予定日6ヶ月前から申請・届出可)は、有効期限(輸出予定日)内に税関に輸出申告をする際に原本を提出します。軽自動車や特殊車両(クレーン車や高所作業車等)でも、道路運送車両法上の自動車登録がされているものは全て対象となります(※大型特殊自動車及び被牽引車を除く)。ただし、※ブレークダウン(部品取り外し等)した車両は使用済み自動車扱いとなり、輸出抹消仮登録証明書(輸出予定届出証明書)は必要ありません。コンテナ積み付け時の都合上、タイヤ・ミラーのみを取り外したものは例外的にコンプリート(完成車)とみなされ、輸出抹消仮登録証明書(輸出予定届出証明書)が必要になります。

4. 通関業者(乙仲)と打ち合わせ、輸出車を指定された保税地域に搬入(コンテナの場合は、バンニング後にCYに搬入)します。室内やトランクルームに標準装備品(通常は予備タイヤ1本と工具類1式)とインボイスに記載された貨物以外の物品があると、申告外物品として密輸の嫌疑を受け、中古車本体の輸出も止まる恐れがあるので注意しなければいけません。

 

盗難車両検索ファーム

http://www.jidoushatounan.com/car-search/


5. 税関に輸出申告(EXPORT DECLARATION)し、必要な検査を受け、輸出許可(EXPORT PERMIT)を受けます。近年、各地で自動車・オートバイ・建設機器等の盗難事件が多発し、その一部が海外に不正輸出され社会問題になっています。税関では輸出申告の審査の際に、警察等の関係機関と連絡を取って盗難車両ではないことを確認し、現物検査の体制を強化して不正輸出の防止に努めています。盗難車両の嫌疑がある時は、コンテナ輸出の場合でも全量取り出し検査を実施し、車台番号を確認して盗難車両かどうかを判定します。絶対に必要というわけではありませんが、中古オートバイは返納証明書の原本・中古建設機器は譲渡証明書または売買時の請求書や領収書の写し・ブレークダウンした車両は登録事項証明書を輸出申告書類に添付した方がよいです。税関検査に時間がかかっても対応できるように、船積みまでの時間に余裕を持って輸出申告します。輸出が許可されると、税関から国土交通省に輸出許可情報が送信され、輸出抹消情報が公益財団法人自動車リサイクル促進センター(JARC)に送信されます。

6. 船積み後、通関業者(乙仲)は船会社が発行するB/L(BILL OF LADING 船荷証券)を取得し、輸出許可書などとともに輸出者に届けてくれます。B/Lは積出港においてサレンダー(元地回収)することもできます。輸出者は船積み後、JARCにリサイクル料金の還付請求を行います。

公益財団法人 自動車リサイクル促進センター(JARC)
https://www.jarc.or.jp

必要書類
再資源化預託金等の取戻し申請書
・輸出抹消仮登録証明書(輸出予定届出証明書)の写し
・輸出許可書・輸出許可自動車情報の写し
・B/Lの写し(車台番号が記載されていること)

2005年(平成17年)より「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(通称:自動車リサイクル法)が施行され、新車を購入時、またはそれ以前に購入した車については最初の車検時か廃車時に、車種に応じたリサイクル料金を支払うことになっています。このリサイクル料金と輸出抹消登録情報はJARCによって管理されており、これら情報を照合し料金の還付をします。中古車輸出業者は、自動車リサイクルシステムへの登録を行うことでオンラインで手続きを行うことができ、還付手数料も安くなります。

RORO船(ローロー船 ROLL-ON/ROLL-OFF SHIP)とは、船首などにランプウェー(船体と岸壁を結ぶ出入路)を備え、自動車が自走して船内に格納できる船のことをいいます。

大型特殊自動車は、道路運送車両法施行規則の別表第1によると、以下のように規定されています。

一 次に掲げる自動車であつて、小型特殊自動車以外のもの 
イ ショベルローダー、タイヤローラー、ロードローラー、グレーダー、ロードスタビライザー、スクレーパー、ロータリー除雪自動車、アスファルト・フィニッシャー、タイヤドーザー、モータースイーパー、ダンパー、ホイールハンマー、ホイールブレーカー、フォークリフト、フォークローダー、ホイールクレーン、ストラドルキャリヤー、ターレット式構内運搬自動車、自動車の車台が屈折して操向する構造の自動車、国土交通大臣の指定する構造のカタピラを有する自動車及び国土交通大臣の指定する特殊な構造を有する自動車 
ロ 農耕トラクタ、農業用薬剤散布車、刈取脱穀作業車、田植機及び国土交通大臣の指定する農耕作業用自動車 

二 ポールトレーラー及び国土交通大臣の指定する特殊な構造を有する自動車 

※ハーフカット・ノーズカット等の作業は、使用済自動車の解体行為であり、自動車リサイクル法の解体業の許可を受けた解体業者でなければ行うことができません。これらを輸出しようとする場合、フロン類・エアバッグ類・鉛蓄電池(鉛バッテリー)・廃油・廃液が回収されていないときは、廃棄物(スクラップ)の輸出に該当する可能性が高く、バーゼル法・廃棄物処理法違反となり、罰せられる可能性があります。

 最後に、商売目的で中古車の輸出を行う場合は、都道府県の公安委員会から古物商の許可を取得します。 古物商の許可は税関で輸出申告する際の必要条件ではありませんが、日本国内で中古品の買い取りをする際には輸出目的であっても古物商許可が必要です。ちなみにインターネット上でオークションサイトを運営する場合は、古物競りあっせん業の届出も必要です。